Low-Power Indoor operationと
Standard-Power operation

この周波数帯の利用形態は、大きく2つにカテゴリ分けされます。

一つは屋内限定で低い送信電力しか認められていない周波数帯(Low-Power Indoor operation, 以下では略してLPI帯と呼ぶことにします)、もう一つはAFCと呼ばれる周波数共用技術の適用を前提とし、LPI帯に比べて高い送信電力かつ屋外利用が許可された周波数帯(Standard-Power operation, 以下では略してSP帯と呼ぶことにします)です。

この新しい周波数帯の活用について、日本はやや出遅れています。現状はまだLPI帯のみが利用可能で、SP帯の利用については他国の動向を見ながら、法令整備を慎重に進めようとしています。

6GHz帯の少し深い話題

SP帯の周波数利用の鍵となる
Automated Frequency Coordination

SP帯の周波数利用の鍵となるのが、AFC、すなわちAutomated Frequency Coordinationです。Wi-Fi6Eへ割り当てられた周波数帯はすでに他の用途で利用されているため、後発であるWi-Fi6Eが既存ユーザへ干渉を及ぼさないよう、慎重に使っていくための技術です。

AFC system operatorと呼ばれる周波数管理業者が定義され、彼らが提供するAFC systemが地理的な場所ごとの利用可能な周波数情報を管理します。SP帯を実際に利用するユーザは、AFC systemへ自身の位置に対する利用可能な周波数や最大送信電力を問い合わせ(Spectrum Request)、そして許可を得る、ざっとこのような仕組みです。

屋内利用限定のLPI帯は、壁や天井・床による電波減衰によって他の無線システムへの干渉を抑制できるので、AFC無しで使えるように定められました。しかし、屋外利用を認めるSP帯には当てはまらないため、AFCによって慎重に周波数を使うことが義務付けられています。

米国FCCからの公告

今年(2023年)の8月末、SP帯の活用をけん引する米国FCCより以下の公告が出されました。

https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-23-759A1.pdf

6GHz帯におけるAFC試験開始についての公告です。FCCは、AFC活用を前提にSP帯の利用を認める決定を行っていますが、細かなルール作りはこれからです。試験を行いつつ、試行錯誤的に徐々にルールを固めていこうというやり方です。アジャイル的というか、実運用しながらルールの細部を詰めて行く手法は、いかにもアメリカらしいですね。

この公告は、米国におけるSP帯の活用状況の現在地を知るうえでとても興味深く、今後の我が国のSP帯活用にも少なからず影響を与えるでしょう。

AFCを前提とするSP帯本格的普及の可能性

ポイントを整理し、少し読み解いておこうと思います。

(1)2021年9月末にFCCはAFCシステム運用者からの実験提案を公募、14の応募者からの応募があり、条件付きで13の事業者を承認した。この13事業者とは、Broadcom, Google, Comsearch, Sony Group, Kyrio, Key Bridge Wireless, Nokia Innovations, Federated Wireless, Wireless Broadband Alliance, Wi-Fi Alliance (WFA), Qualcomm, Plume Design, and RED Technologies。各事業者は厳格な試験項目が定義されたラボ試験やパブリックトライアルが義務付けられ、これらをパスした事業者が最終的にコマーシャルサービスを提供できる。

(2)AFC systemの詳細なスペックは、WinnForumという組織が作成している。

https://winnf.memberclicks.net/assets/work_products/Specifications/WINNF-TS-1014-V1.0.0%206GHz%20Functional%20Requirements.pdf

SP帯を利用したいユーザの位置やアンテナ設置高などの情報から、AFC systemは事前に定義された電波伝搬モデルと干渉保護基準に基づいて、当該ユーザが利用できる周波数と送信電力を決める。

(3)パブリックトライアル期間中は、異議申し立てを受け付けるポータルサイトを立ち上げて、トライアル期間中に受けた主として既存周波数利用者からのクレームの統計、どのように対応したか、それが理にかなっているかどうかなどの報告書を作成し、当局へ提出。当局では、報告書を分析し、必要に応じて各AFC systemへの改修を命じる。

SP帯が利用できるようになるためには、AFC systemの運用が欠かせません。つまり、実際の活用が始まるまでは、まだもう少し時間を要するでしょう。AFC systemのスペックはすでに存在しており、着々と準備が進んでいる様子がうかがえます。

周波数共用技術はWi-Fiのみならず、6G以降のセルラーシステムでも導入が進んでいくでしょう。本ブログでも何度か取り上げたように(周波数共用の話)、これからのモバイル通信を語るうえで欠かせない技術です。

2010年代前半に標準化されたIEEE802.11afは、テレビの空き周波数(いわゆるホワイトスペース)を無線LANに再利用しようという規格でした。AFCと同様、周波数データベースによって地理的に利用できる周波数を選択する手法が検討されました。いくつかの国で実験的運用がなされたことを記憶していますが、残念ながらその後、本格的に商用利用された例はほとんど耳にしません。

果たして今回のAFCを前提とするSP帯が本格的に普及するかどうかは何とも言えません。しかしながら、米国FCCが進めようとしているAFCシステムのトライアル公募に参加を表明した事業者の名前を見ると、本格的普及の可能性を大いに感じます。

本件の動向については、順次、本ブログでまとめていきたいと思います。

    

著者

代表取締役社長 古川 浩

PicoCELA株式会社
代表取締役社長 古川 浩

NEC、九州大学教授を経て現職。九大在職中にPicoCELAを創業。
一貫して無線通信システムの研究開発ならびに事業化に従事。工学博士。